かつて北海道テレビ(HTB)の番組「水曜どうでしょう」の企画「試験に出るどうでしょう」の中で、大泉洋さんが“天井川”を答えられない場面がありました(1999年2月10日放送分)。
もちろん大泉さんが地理に弱くて天井川を知らなかったというのもあるのですが、実は北海道を含む東日本には天井川がほとんど存在しないために大泉さんが見たことも聞いたこともがなかった可能性も大いに考えられるのです。
今回はそんな天井川について見ていきたいと思います。
1.天井川とは
氾濫する河川に対して人は両岸に堤防を築いて河川の流路を固定して制御しようとしますが、その河川の土砂の流入量が多いと土砂が堆積して河床が次第に高くなり堤防の機能が低下します。
そこで河川の氾濫を防ぐべく堤防を高くしますが、やはり河床には土砂が堆積していくため、さらに堤防を高くして…といういたちごっこを繰り返した結果、河床が周囲の平面地よりも高くなった河川のことを「天井川」と呼びます。そのため、自然に形成されることの多い地形の中で、天井川は人の手も介在するという珍しい地形と見ることもできます。
この天井川の形成には花崗岩が風化してできる「真砂土(マサ)」の存在が大きいとされます。フォッサマグナ(中央地溝帯)を境に西南日本と東北日本とでは地質が異なり、西南日本では基部の花崗岩が地表面に露出しているため、花崗岩を出自とするマサは日本で主に西日本に分布することとなり、必然的に天井川は西日本に多く見られることになります。
また、水源がある山間部でハゲ山と化すほど木が大量に伐採された点、定住する人々が自身の生活を守るために堤防を築き続けた点などを考えると、より歴史の深い西日本の方に人為的要素が集中していたことも、天井川が西日本に多い理由となるのかもしれません。
2.天井川の特徴
河床が周囲の平面地よりも高いという特徴がある天井川ですが、高い所では二階建ての家屋を超えることもあります。そのため、河川を越えるのが難しくなり、天井川の堤防が右岸と左岸とを分ける“壁”のように作用することもあります。その“壁”を突破する方法として2つの方法が考えられます。
(1)トンネルや水路橋を設ける。
(2)流路を変更させて天井川自体を無くす。
また、河床の土砂が堆積したために、普段はあまり水が流れていないけれど増水すると一転して暴れ川になる、というのも天井川の特徴として挙げられます。その対策としては、
(a)砂防ダムなどを設けて土砂の流入を抑える。
(b)河床を掘り下げる。
などが挙げられます。
3.対象の天井川
今回は、以下の天井川を対象としました。
① 草津川(滋賀県)
② 青谷川、不動川、馬坂川、防賀川、天津神川(京都府・木津川流域)
不動川
馬坂川
防賀川
天津神川
③ 芦屋川、住吉川、石屋川(阪神間)
芦屋川
住吉川
石屋川
④ 湊川(神戸)
これらの河川の歴史や特徴に着目していきたいと思います。
<参考文献>
『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』
藤岡 換太郎 著,講談社ブルーバックス,2018年
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